第27章 視察
「けど、それ単に見つかったってだけだよな?初めて見破られたもんだから動揺してるだけってことは無いか?」
太鼓鐘は気にしすぎだ、とばかりにレンに返した。
「それも確かにありますが…。」
レンはそれでも納得は出来ない。
この言いようのないもやもやをどう説明したらいいものかと頭を悩ませた。
「…その人は刀剣である可能性がありますね。」
江雪は静かに口を開いた。
「確かに、あの人はあなた方に近い感じはあります。けれど、感知する能力が異様ではありませんか?」
レンは気味悪そうに腕を摩りながら江雪に尋ねる。
「そうですね。私達は五虎退殿が言うように、貴方の神気は感じ取れますが、それは匂いを辿っていく感覚に近く、より神気が濃い方向に居るのだろうと思う程度です。
それを、すぐ様位置まで把握してしまうのは、刀剣の中でも異様と言えるでしょう。」
「…あの人は不気味です。まるで…、」
レンはそこまで言って言葉を切った。
そうだ。”異様”なのだ。
こちらを見た、只それだけなのに、あの人には異様さを感じるのだ。
例えば、燭台切や薬研に同じことをされたとしても、大して驚きはしないだろう。
違和感。そう、言ってみれば違和感だ。
人のようで人じゃない。刀剣のようで刀剣じゃない。
「…禍ツ神、…のような感じがしました…。」
あの青年は、小夜が成りかけたアレに近い。
「まさか…。」
「お前の勘違いじゃ…。」
レンの言葉に彼等の間に動揺が走る。
「けど、上から見た限りじゃ、小夜みたいな変形はしてなかったぞ…。」
薬研は不安げにレンに言う。
「えぇ、私も見ていましたが、あの人に小夜さんの時みたいな変化はありませんでした。
…私の思い違いだといいのですが…。」
皆で本丸を見下ろすと、不安げに動向を見るのだった。