第27章 視察
青年は大して気にもせず、仕切りに辺りを見回している。
男達も辺りを見回し、何かを伺っている様子だ。
封印が破られた原因を探っているのか、或いは誰かを探しているのか…。
レンは距離を取りつつ様子を見る。
「こちらは審神者様がお住まいになっておりました、居住棟で御座います。」
こんのすけを先頭に玄関から入り、中へと入っていく。
最後に青年が入っていくが、ふとレンの方を見た。
彼女は急いで更に身を潜める。
青年はレンに気づかなかった様で、彼女の方角を見たまま中に入っていった。
その隙にレンは念の為場所を移動する。
何も見つからなかった様で、男達は何事か話をしながら屋内から出てきた。青年は何故か顔を顰めて、二言三言呟いたようだった。
と、突然男達が怒り出した。
「何の為にお前を連れて来たと思ってるんだ!さっさと探せ!!」
距離が離れていてもよく聞こえる音量だ。
やはり彼等は何かを探している。
何を探しているんだ…。
気配を消しながら彼等を伺っていると、青年がまたレンの方を注意深く見た。場所を全く変えたにも関わらず…。
彼女は一抹の不安を覚え、一度場を離れる。
ーもしかして、探られているのは私…?
レンは十分な距離を取り、上から彼等の動きを探ろうと屋根に登る。
たが、視界に入った時にはあの青年の姿が無かった。
ーどこだ、どこに行った。
レンは尾行を諦め、あの青年の居場所を探ることにした。
すると、前方に立ち止まっている青年を見つけ、慌てて下に降りる。
やはり、きょろきょろと辺りを見渡し、何かを探している。
かと思いきや急に後ろを振り返った。
レンはその顔を見た途端に息を呑んだ。
五虎退の兄弟かと思う程よく似ていたのだ。
しかし、青年は黒髪赤目だ。
着ているスーツやコートも真っ黒なものだから、まるで烏の様だ。
「ねぇ、いるよね?出て来てよ。」
青年は唐突に話しかけて来た。
レンを明らかに意識している。
ー何故?バレるはずが…。
レンは言いようのない気味の悪さを覚えた。
青年は無言の彼女に痺れを切らした様にこちらに向かって歩き出す。その動きに迷いは無く、位置も正確に掴んでいる。
レンは堪らず、物陰に隠れると影分身を解いた。