第27章 視察
レンが本丸をじっと見ていると、転移装置に反応が現れる。表門からは入ってこない様だ。
「あれ、予想が外れたな。」
薬研は苦笑して、後ろ頭を掻く。
レンは彼等に身を屈めて隠す様に言い、彼等はレンに倣う。
暫くして、鳥居に人影が見えた。男性2人と全身が黒っぽい青年が1人だ。側にこんのすけも確認できる。
「それ程多くないよね。転移装置を使ったならもっと団体様で来ると思ったのに。」
燭台切は腕を組んで考え込む。
「単にそういう気分だったんじゃねぇの?」
太鼓鐘がそう言うも燭台切は納得できない様子だ。
「違和感でもあるんですか?」
「そう、だね。違和感がある。何が引っかかるのかって聞かれるとわかんないけど。」
燭台切はそう言って、困ったように笑う。
「五虎退?何であそこにいるんだ…!?」
突然、薬研が驚きの声を上げる。
その声に彼等は本丸を見て、五虎退と見比べる。
「ぼ、僕はここにいます…。」
五虎退は困惑の様子で小さくなった。
「すみません。あれ、私が変化しています。
気になったんで少し尾行をしようかと思って。」
レンがそう言うと、薬研ははぁ、と一際大きく息をついた。
「びっくりした…。五虎退が残ってるのかと思った。」
「…それはある意味ホラーですね。すみません。」
レンは悪びれる様子もなく、淡々と言う。
「最初に言っといてくれよ。終わったと思ったぜ。」
薬研はレンに恨めしそうに言った。