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君に届くまで

第25章 鶴丸国永の記憶





戦場に群青の衣がひらりひらりと舞う。
次々と時間遡行軍を倒していく様は、正に圧巻で美しい。
初代審神者は、よく三日月と俺を第一部隊で組んだ。
三日月と共に背中合わせで戦うのは、気分が高揚する。

『やはり鶴と戦に赴くのが一番しっくりくるな。』

俺もそう思っていた。
だからこそ、その言葉は何よりの賛辞だった。
三日月の晴れやかな笑顔は今も忘れない。

いつからだろう。その笑顔が消えていったのは…。

新しい審神者に寝屋に呼ばれる度に、仲間内で殺し合いをする度に、いつしか三日月に影が差す。

『鶴、もし俺が化けたら、お主が折ってくれ…。』

仄暗く笑いながら言った、その言葉が最期だった。

それから半刻と経たずに堕ちてしまった三日月を俺は泣く泣く斬り伏せた。

こんな風に最期を迎えることしか出来なかったのだろうかと今でも考える時がある。


『鶴!』

またそんな風に楽しげに笑う三日月に会えたらと…。





「…、…さん、…つるさん、鶴さん。」

鶴丸が薄ら目を開けると、光忠が心配そうに覗き込んでいた。大倶利伽羅も反対側で覗き込んでいる。

「大丈夫かい?」

鶴丸は何の事かと首を傾げる。

「覚えてないかい?レンちゃんと喧嘩して…」

そこまで聞いて、思い出す。

「あんの…!小娘…!」

鶴丸は飛び起きるが、頭痛で起きれず、頭を抱えて布団に逆戻りとなった。
後ろ頭を強く打ったせいだろう。
燭台切はやれやれとため息をついた。

「あいつは何処にいるんだ?」

鶴丸は呻きながら尋ねた。

「今、ご飯食べてるよ。後でちゃんと…」

「くそ!好き放題やってくれる!」

鶴丸は一泡吹かせるつもりが、自分が一泡吹いてしまったことが悔しくてならない。



「小娘!覚えてろよぉぉおお!!!」



鶴丸の咆哮が本丸に響き渡る。




厨にもその咆哮は聞こえてきたが、レンは相変わらず我関せずを決め込んでいた。

「鶴丸殿の叫び声が聞こえますよ。」

「知りませんね。触らぬ神に祟りなしです。」

レンは3杯目の餡掛け炒飯に手をつけた。

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