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君に届くまで

第3章 手当て



「うん、食べたね。」

眼帯をした男は、空になった土鍋を満足そうに見つめる。
人間の看病なんて、と思っていたのだが、どうにも放っておけず作ってしまったのだ。

はじめは、作っても手をつける気配が無かった。
ずっと起き上がれなかったのだろう。荒い呼吸を繰り返しながら、何事かうわ言を言っているのも聞いた。

その後も気になり、朝、昼、晩と粥を作り続けた。
二日目の昼になり、漸く空になった土鍋を目にする事が出来た。

「光坊、様子はどうだ?」

鶴丸が訪ねて来た。

「やぁ、鶴さん。」

そう返事をしながら、光坊と呼ばれた男は空になった土鍋を見せる。
鶴丸はそれを見て、少し安心した様に微笑んだ。

「漸く食べたな。」

「うん。顔色も様子もかなり落ち着いてきたよ。」

「早く起き上がれる様になるといいんだがな。」

それを聞いた男はなんだか可笑しくなって少し笑った。

「本当は、起きない方が僕達にとってはいいんだけどね。」

それを聞いた鶴丸はそうだった、と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。

「燭台切さん。」

廊下から青い目の少年に呼びかけられる。

「なんだい。」

男の名は燭台切光忠という。光坊は鶴丸こと鶴丸国永から呼ばれている愛称だ。

「言われていた物を持ってきました。」

そう言うと水を張った桶と手拭いを二枚差し出した。

「ありがとう。堀川君。怪我してるところ悪いね。」

「いえ、お安い御用です。それにみんな同じですから。」

青い目の少年は堀川国広という。先日、侵入者である女の退治に一役かった少年だ。

「あれー、みなさんお揃いで。それで、様子はどう?」

赤目の青年が声をかけると、加州、と皆から呼びかけられる。
彼の名は加州清光という。

やはりみんな、女の様子が気になる様だ。
燭台切が粥を完食していた事を話すと、二人もどことなく安堵した様子で微笑んだ。

「ふ〜ん、良かったんじゃない?とりあえずは。」

加州は興味無さそうに返した。

「でも、なんだかんだ言って、加州さんが一番様子を見に来てましたよね。」

図星を突かれ、加州は慌てふためく。

「し、し〜らない。気のせいでしょ。」

加州の慌てぶりに他の3人は楽しそうに笑った。
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