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君に届くまで

第3章 手当て



そっと障子が開くと赤い目に黒髪の青年が顔を覗かせる。
女はまだ眠ったままだった。

音を立てぬよう、そっと寝床まで近づく。
女は寝苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。

何をしたらこんな怪我を負うんだろう、と思う。

「加州。」

後ろから呼びかけられ、振り向く。

「鶴丸も来たの?」

「何となく気になってな。」

鶴丸と呼ばれた青年は白い頭を掻きながら少し困ったように答える。

「俺も。な〜んか気になっちゃってさ。人間なのにね。」

「何したらこんな大怪我負うんだろうな。」

奇しくも先程、加州と呼ばれた青年が思ったことと同じだった。

「みんな、考えること一緒だね。」

女を見ながら、少し笑って言った。









レンはそれからも気が付いては、気を失いを繰り返していた。
その時々で昼だったり朝だったり夜だったりを何度か見た。

どのくらい経ったのか、すっと目が覚めた。熱はまだ高いが鉛の様な怠さが幾分かはマシになった気がする。

ふと横を見ると小さな土鍋が鍋敷の上に置かれていた。ご丁寧に蓮華まで付いている。
ゆっくりと起き上がり中を確かめる。
温かい蓋を取ると、ふんわりと粥の匂いが鼻を擽る。現金なもので匂いを嗅いでしまうと途端に空腹を感じてしまう。

「…いただきます。」

毒が入っているかも、と思わなくもなかったが、空腹には勝てなかった。盛り付けられた粥を一粒残らず食べきると、また布団に潜り、眠りに就いた。
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