• テキストサイズ

君に届くまで

第23章 手入れ ーその2ー



「なぁ、伽羅坊…。あの子に貞坊を預けても本当に大丈夫だと思うか?」

鶴丸は縁側で寝そべり、空を見上げながら聞いてみる。

「…知らん。答えが出るくらいだったら、反対なんてしない。」

大倶利伽羅はそっけなく答えるが、その表情は苦悶に満ちている。
彼等は燭台切程、レンに関わっていないから為人がわからない。

『関わってみればわかるんだ。あの子には害意が無いことが。
あの子は僕達を”人”として見ている。一つの命として見ているんだ。』

燭台切の言葉が2人の中に甦る。

「なぁ、俺達も関わってみるか?」

「俺は…。」

“馴れ合うつもりはない”とは言えなかった。人間を見定める為には馴れ合わなければ始まらない。
大倶利伽羅は大きく息を吐き出すと、渋い顔をしながら立ち上がる。

「行くぞ…。」

鶴丸も驚いて立ち上がる。

「行くって、どこへ…。」

「決まってるだろ。広間だ。」

鶴丸は目を瞠った。










彼等は揃って広間に来るも、もぬけの殻だった。

「誰もいないな…。」

鶴丸は肩透かしを食らった気分だ。それなりに緊張して来たというのに、出鼻を挫かれてしまった。

「手入れにでも行っているんじゃないか?」

大倶利伽羅は大して気負った様子がなく、答えた。

「…伽羅坊は緊張していないのか?」

「人間を見るだけだろう?何を緊張することがあるんだ?」

そう来るか、と鶴丸はガックリと肩を落とす。
鶴丸と大倶利伽羅では、”関わる”に対する思い描いているものが違うのだ。

「…ここら辺で待っていればその内帰ってくるだろう。」

大倶利伽羅はそう言って、縁側に座り込んだ。

「そうだな…。ここで待つとするか。」

鶴丸も大倶利伽羅に倣い、縁側に座る。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp