第84章 新たな拠点、新撰組
暫くして体が休まった頃、二人は再び木々の間を静かに走り出した。
「どう?見つかりそう?」
「多分ですが、こちらから感じるんです。」
そう言って指した方向は、やや東よりの、八木邸からは北北東に当たる方向だった。
家は見受けられず、鬱蒼と佇む黒々とした木の影ばかり。
思わず乱は顔を引き攣らせた。
「…随分と山奥だね。」
「そう遠くはならないと思うんですけど…。もう少し行って辿り着かなければ引き返しましょう。」
逆にレンは夜道には慣れているので、今見えている情景に何を思うこともなかった。
それよりも、八木邸から距離が出来てしまうことの方が心配だった。
「そうだね、その方がいいと思うよ。」
乱は木々の間を走りながら気味悪そうに答える。
そこで漸くレンは考えに至って、乱をちらりと見た。
「暗い所、怖いんですか?」
「…尽くプライドを崩そうとするよねぇ。」
敢えて言わないことを敢えて口にするのがレンという人間だ、と乱は思う。
「そうですか?そんなつもりではなかったんですが。」
「もー…。ま、いいよ。あんまりにも真っ暗で不気味だなって思ったんだよ。それだけ。」
「そうですか…。あ、引き返す必要なさそうですね。ありました。」
レンは指を指しながらスピードを落とすと、ストンと木から降りた。
乱も即座にストンと降りるとレンの隣へ並ぶ。