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君に届くまで

第84章 新たな拠点、新撰組




―京都では…。


「あ〜、いい天気だなぁ!」

翌日はからりと晴れた晴天となった。

「この宿いいなぁ。飯はうめぇし、布団はふかふかだし。お陰でぐっすりだぜ。」

「…あなたは監視として来たんですよね?」

すっかり満喫している藤堂にレンは呆れ顔を向けた。
すると、藤堂はピシリと固まる。

「あ…。」

「…話のネタになりそうな案件ですね。」

レンは興味のなさそうな声で爆弾を落とす。
対して、藤堂は分かりやすく慌て出した。
レン達に逃亡の意思がなく、客人が増えたような認識でいたから事なきを得ただけである。
本来、監視の目的で来たのであれば、どう考えても熟睡はいただけない。

「ひ、土方さんだけには言わないでくれよ…?」

「無理じゃないですか?だって指示を出したのは土方さんですよね?」

「だ、だから、俺はちゃんと監視してたって言ってくれよ、な?」

両手を合わせて頼み込む藤堂を、レンは横目でちらりと見てからしらっと前を向く。

「すみません、私は嘘をつけない性分でして。」

「「「うそつけ。」」」

藤堂と、それを聞いた加州、乱の声が重なった。

「平然と嘘つく事いっぱいあるじゃん。」

「そうでしたっけ?」

乱の言葉に、レンはいつもの調子で惚けて見せると、彼らは一様にため息をついた。

「これだもんね〜。」

「この間なんて、僕が戸棚に取っておいたお菓子が無くなっててさ。いつ誰が食べたのか分からなくて…。レンは知らないって言うし。」

レンだと思うんだけど、と乱がじとっと彼女を見ると、レンは乱からふいっと顔を背ける。

「あー、乱あの時色々な人に聞いてたね。」

「苦労してお忍びで買ったカステラだったのにぃ…。」

「老舗和菓子屋の限定ものだったよね。」

加州、乱、大和守の会話を聞き、レンは腑に落ちる。
確かに生地はふわふわで、甘さも絶妙。
土台に当たる焼き生地は柔らかいクッキーのようなサクサク感で、スポンジ部分との掛け合いが何とも言えない上品な旨さだった。

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