第84章 新たな拠点、新撰組
「そこで、これの出番だ。」
三日月が袖から出して置いたものは、有事の際にとレンが置いていった清浄珠…神気を貯めておく水晶球だった。
「おい待て。それは万が一の時にって置いていったものだろ?」
「既に今が万が一の時だ。」
大倶利伽羅の苦言にも三日月はどこ吹く風でにこにこと宣う。
それを見た彼らは、脱力した。
「…まぁ、考えようによっては、レンがいない時点で有事と言えなくはないが…。」
鶴丸と鯰尾はうーん、と腕を組む。
レンの状況を知りたい気持ちは大いにある。
が、自分達が聞き分けがないと政府に知れた時に、あちらがどんな反応をするかが気になるところ。
窮屈な、或いは罰を受けるような措置を取られたら、と思うと三日月の提案を素直には受け入れられない。
「まずは長谷部に連絡してみるのはどうでしょう?」
鯰尾は素直に聞く事を選ぶ。
「長谷部なぁ…。うーん…。」
この本丸には長谷部は顕現していない。
よって、七海の本丸にいる長谷部を指している。
だが、長谷部である。
あの長谷部である。
「面倒な奴に連絡すれば余計に面倒だろうが。」
案の定、大倶利伽羅は顔を顰めた。
「あ、でも七海さんの本丸には行き来自由ですよね?なら、長谷部さん以外に聞き出せる人を見つけられるかもしれません。」
五虎退はぱあっと顔を輝かせた。
「あぁ。そっちの方がまだ安全かも。」
「上手くいけば長谷部にもバレずに済むかもな。」
「機密事項だぞ?七海達が他に話してるとは思えない。」
大倶利伽羅はため息をつく。
まだたったの三日である。
素直に本丸で待っていた方が少なくても面倒はない、と彼は内心ごちた。