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君に届くまで

第84章 新たな拠点、新撰組



「やーっと起きたな鶴丸。」

太鼓鐘はぷはっと布団を剥いで顔を出す。

「食べ物で釣られるなんて。段々と主に似てきましたねぇ。」

「レンさんも食べる事大好きですからね!」

鯰尾と五虎退の言葉に鶴丸の頬がほんのりと赤らむ。

「それだけ鶴がレンの事を好きだとも言えるな。」

三日月の言葉に益々赤らみながらも、ぐっと口元を引き締める。
それを見た太鼓鐘はにやにやと笑いながら彼を見やった。その瞳には揶揄いの色が浮かんでいる。

「しょっちゅう審神者部屋に入り浸ってるもんなぁ、鶴丸?」

「いいだろ!?レンといたいんだ!貞坊だってそうだろ!」

遂に羞恥が限界を突破した鶴丸。
ついつい声を荒げてしまう。

「おぉ、怖い怖い。」

怖がっている素振りを見せる太鼓鐘だが、満面に揶揄いの笑みが溢れている。

「…やっと起きたのか。」

すっと入って来て開口一番に静かな声が響く。

「伽羅!おかえり。」

「おぉ、大倶利伽羅か。大事なかったか?」

「「おかえりなさ〜い!」」

出陣から帰った大倶利伽羅を、太鼓鐘、三日月、鯰尾と五虎退が口々に労った。

「おかえり。しかし、伽羅坊までお小言を言うことはないだろ?」

鶴丸も労ってから、拗ねた様に頬を膨らます。

「お前がいつまでも布団で石になってるからだろ。」

大倶利伽羅は着替えると、戦装束を衣紋掛けに吊るして片付けていく。
それを見ていた三日月は、彼の背中に声をかける。

「そうだ、大倶利伽羅。お主も一緒にどうだ?」

三日月がぬれ煎餅の盆を差し出すと、大倶利伽羅はちらっと一瞥してふいっと興味を無くすかのように視線を外す。
だが、

「あ、あの、お茶入れました。」

すかさず五虎退が湯気の上がる湯呑みを差し出すと、外れた視線が戻ってきた。
大倶利伽羅は五虎退に弱い。

「……。」

馴れ合いはしない、とは言えず、彼はムスッと僅かに顔を顰めて五虎退の側に座る。

「…伽羅もレンも、五虎退には弱いんだよな。」

太鼓鐘の呟きに鯰尾は深く頷く。

「五虎退って…最強だよね。」

たとえ最弱でも最強を手懐けられれば、それは最早最強である。

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