第84章 新たな拠点、新撰組
ー現代では…。
「鶴丸、元気出せって。」
「鶴や、一緒に日向ぼっこでもしよう。」
「つ〜るさん!」
「あ、あの、鶴丸さん、一緒にお茶でも…。」
不貞寝を決め込み、布団を深々と被った鶴丸の周りを刀剣達が囲む。
かれこれ今日で丸二日である。
「じゃーん!お煎餅も持ってきましたよ!」
鯰尾が持ってきたのは、彼等の間でちょっとしたブームとなっているぬれ煎餅。
煎餅でありながらしっとりとした味わいが常とは違った楽しさである。
元々の品数は少なく、入手も中々難しい事も相まって、彼等の間では貴重な菓子となりつつある。
「お!どこで買ったんだ?」
「ほう、どれどれ。」
盆いっぱいに乗せたぬれ煎餅の山に、太鼓鐘と三日月の手が伸ばされる。
「老舗の花見月で買った限定なんですよ。並ぶのに苦労しました〜。」
鯰尾の言葉に布団の塊がぴくりと動く。
それを横目に、三日月は包装紙をぴりぴりと開けていく。
その瞬間、香ばしい醤油のいい香りがふわんと辺りに広がる。
「花見月か。それは期待できるな。」
三日月は言いながら、はむ、と一口齧り付く。
「うまそー、俺も。」
「ぼ、僕もいただきます。」
太鼓鐘と五虎退も手を伸ばす。
「じゃあ、僕もいただきますか。」
鯰尾は持っていた菓子の盆を脇に置き、ぬれ煎餅を一枚手に取った。
皆で袋を開けると、より醤油の香ばしい匂いが広がった。
「うまっ!」
「さすが花見月だな。」
「このしっとり感がいいですね!」
「並んだ甲斐がありました!」
…とまあ。
彼等が好き勝手言っていると、
「だああああぁぁぁ!!」
「んぐっ!」
鶴丸が遂に怒り出した。
飛び起きる様に起き上がった為、側にいた太鼓鐘は綺麗に舞った布団にすっぽりと包まれてしまう。
「人の頭上で美味そうな物を食いながら話すんじゃない!」
彼はそうがなりながらも、すぐ近くに置いてあったぬれ煎餅を一枚取り、バリっと少し乱暴に袋を開けて齧り付く。
その瞬間、怒りの形相だった鶴丸の顔が綻び変わる。
「…確かに美味いな。」
「でしょ〜?」
鯰尾は得意げに笑顔で返した。