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君に届くまで

第83章 時間遡行軍、現る



ここまでで、およそ10分から15分。
ただ背を向けてじっとしているには少々長い時間と言えよう。

「なーんか、遅くねぇか?」

「そ、そうかな…。ははは…。」

それはそうだろう。
レンの手当は今からだ。乱の治療を見せるわけにはいかない。
大和守はレン達の様子を見つつ、引き攣り笑いを浮かべた。

その様子に気づいた藤堂は、少し目元を険しくさせる。

「…ほんとはなーんか隠してんじゃねぇか?」

レンは藤堂の疑心を読み取り、加州の手を止めさせる。と同時に、藤堂が自身の手を外した。
視界の開けた藤堂に、刀剣達はあわあわと焦り出す。
レンはそれを見て、片方だけ抜いていた腕を両方抜いて肌を曝け出した。
胸元をサラシで覆った以外は素肌である。
その姿に刀剣達は揃ってぎょっと固まった。

「ちょっ…、レン…!」

「見られちゃう…!」

慌て出す加州と乱をレンは手で制した。
そして、玉鋼と補助具を片付けさせる。

「なぁ、さっきから何してんだよ。」

「何って…、手当ですよ。」

完全に疑ってかかる藤堂に、レンはのらりくらりと返す。

「絶対違う事やってるだろ。」

藤堂は言ってから断りもなく振り向いて固まった。

「……!!」

「こういうの、”助平”って言うんでしたっけ?」

レンは、にやりと意地悪そうに笑いながら藤堂を揶揄する。
肌を晒した割に、至って冷静な彼女に刀剣達は揃って頭を抱えた。

「おまっ…!!」

対して、藤堂は裸同然のその姿に顔を真っ赤にしてあたふたと慌てふためくばかり。
どちらが恥ずかしいのやら…。

「お前、女だろうが!」

自分ばかりが慌てているその状況に、藤堂は悔し紛れにレンを責めるも、彼女には聞く耳はない。

「じゃあ、あちらを向いててくれますよね?」

にこりと無機質に笑うレンに、藤堂はぐっと言葉を詰まらせる。

「お前なぁ…。」

全く取り合わないレンに肩を落としつつ、藤堂は渋々目を瞑るとレンに背を向けた。

「…振り向いてほしくないんだったら、もうちっと騒ぐか焦るかしろよな。」

「「ごめんね…。」」

大和守と燭台切は冷や汗を浮かべながら、彼女の代わりにしおしおと謝った。

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