第83章 時間遡行軍、現る
加州はもたもたしてはいられないと、乱に手伝ってもらいながら素早く包帯を巻いていく。
そして頬にも傷薬を塗って、レンをせっついて素早く着物を着せていく。
「…ゆっくりでいいですよ?」
「「そんなわけにはいかないよね。」」
加州と乱は、威圧する様に言った。
「待ってる人がそこにいるでしょうが。」
「また振り向かれたら困るでしょうが。」
さっと着せて、ぎゅっと腰紐を絞る。
着せ終わって、ふぅぅ、と二人は息をついた。
対して、レンは先程のことを気に留めていない様子。
「…そうですかね…?」
小声でそう呟くと、首を傾げた。
藤堂の手前大っぴらには言えないが、レンは見られても困りはしない。変に恥ずかしがる方が余程恥ずかしいことの様に思う。
その仕草に彼女の意図を正確に読み取った加州と乱は揃って項垂れた。
「もう良さそうですね。」
堀川がそう言うと、燭台切もそうだね、と頷く。
「もういいよ。」
「や〜っと終わったか。」
大和守の言葉に藤堂は全身をほぐす様に大きく伸びをする。
振り返ると、先程のあられのない姿ではなく、きちんと着物を着たレンが立っていた。
「…お前ら何で疲れてるんだ?」
彼女の隣でぐったりしながらのそのそと片付けをする二人を見て、藤堂は首を傾げる。
「「…さっきの事でね…。」」
「あぁ…。」
藤堂は、思い当たって呆れ顔を見せた。