第83章 時間遡行軍、現る
「おかえりやす。えらい遅かったなぁ。」
レンの姿を見て、番頭は声をかける。
「ちょっと手間取ることがありまして。」
「手間取る?なんや、チンピラに絡まれでもしたんかいな。」
「まぁ、そんなところです。」
「なっ、俺たち…むぐっ!」
レンの受け答えに藤堂が口を挟もうとしたところで、隣にいた燭台切に口を塞がれる。
「あぁ、それと。すみませんが、今晩だけもう一人泊めさせてもらえませんか?」
「もう一人?」
番頭はレンの後ろを覗き見て、昨日と違う者を見て取る。
彼を見て、事情を汲んでくれたものと踏んで、レンは朱銀一枚を差し出した。
「お釣りは要りません。」
「まいどおおきに。好きに使うてや。」
嫌な顔ひとつせず、すんなりとレン達を通す。
「あぁ、あんさんら今晩が最後やろ?ご飯くらいはタダで出したったるから、後で降りといで。」
「…いただけるんですか?」
レンは少々面食らう。
彼等商売人は金勘定にはとことんシビアである、というのが彼女の印象であり、事実そう豪語する者もいた。
それだけに、気前の良さに少なからず驚きがあった。
「えぇねんえぇねん。こないに気前よう出してくれたんや。こちらかて気前ようやらな。」
それを聞いた刀剣達は、小さくガッツポーズを取り、各々喜んだ。
レンはそれをちらりと見た後、番頭に向き直る。
「ありがとうございます。では後ほど、よろしくお願いします。」
「はいよ。」
レンは番頭の返事を聞くと、刀剣達を振り返り、部屋へと向かった。