第83章 時間遡行軍、現る
「あ、あの〜…。」
土方の怒鳴り声に、加州が素早く駆けつけた。
「ごめんなさい。僕達もレンと一度宿に戻りたいです。大事な荷物もあるし。」
「そうなの。借りっぱなしでも抜けの空なのは心配だし。」
乱も加わる。
「明日の朝には必ず伺いますから。」
堀川も加わった。
「「「お願いします。」」」
仔犬が三匹並び両手を組んですがる様に見上げる。
「うっ…。」
土方は苦い顔をして体を少し仰け反らせる。
そして、少しばつが悪かったのか小さく舌打ちをした。
「…本当に明日朝には来るんだろうな。」
「「「約束します。」」」
うるうるきらきらとした目で見られると罪悪感がひしひしと込み上げてくる。
特に背の低い二人はほんの子どもの様で、土方は強く出るに出られない。
レンはその様子に、説得は彼等にまるっと任せようとそっと横を向く。
「……。」
土方は腕を組んで逡巡した後、お願いポーズを崩さない三人を苦い顔のまま見る。
その眉は悔しげにひくひくと動いている。
「…誰か一人付けるぞ。いいな。」
「監視ってこと?」
乱が言うと、
「そうだ。」
土方は深いため息をついて肯定した。
「「「…よかったぁ…。」」」
三人はほっと胸を撫で下ろした。
「んじゃ、俺が行くか。」
楽しそうに永倉が名乗り出ると、
「藤堂さんを指名します。」
レンがバッサリ切り捨てた。
「だから!てめぇは立場を弁えろ!」
土方は頭を抱える。
これはとんでもない頭痛の種を増やしてしまったのではないか、と少しずつ後悔が広がっていく。
対してレンは悪びれる様子もない。
「はて。永倉さんでなければならない理由はないですよね。」
「てめぇは選べる立場じゃねぇって言ってんだ!」
「監視なら小柄な人を希望します。」
「聞けよ!!」
「部屋が狭いので嫌です。」
言いたい放題のレンに、土方は疲れて痛み出した米神を摘む。
「…俺の立場は?」
「ごめんね。屯所行ったらいっぱい話そう。」
しゅんと肩を落とす永倉に、燭台切はそっと肩を叩いた。