第83章 時間遡行軍、現る
「何しやがる!!」
勢いよくレンを振り返った土方は、目をつり上がらせて怒鳴った。
レンの後ろでは、藤堂、原田、永倉が体を震わせながら懸命に笑いを堪えている。
「帰ろうとしたので止めました。」
平然と答えるレンに、土方の怒りは益々高まるばかり。
「そういうこと聞いてんじゃねえ!!」
ご尤もである。
だが、それを聞いたレンは、何故か考えるそぶりを見せた。
「あー…。なら、帯を引っ張ればよかったですか?」
「お前は俺の身包みを剥がす気か!」
「「「「あははは!!」」」」
沖田、藤堂、原田、永倉は堪らないとばかりに、声を上げて笑い出した。
「ひー!土方さんの褌姿とかマジで笑えるんだけど!」
「あ、あの土方さんが…!くくくっ…!褌一丁…!」
「だ、だめだ!俺ぁ、腹が捩れちまう!」
藤堂、原田、永倉はお互いの肩を叩き合って存分に笑う。
「ほんと。詩集盗むより面白いよね、それ。」
沖田がくつくつと笑いながら言うと、そばにいた斎藤が眉を顰めた。
「総司、副長の詩をそんな風に言うもんじゃない。」
「前から思ってたけど、一君の中であの詩集はどんな位置付けになってるの?」
心底不思議そうに問う沖田に、斎藤はさもありなんといった風にきりっとした表情を見せた。
「勿論、素晴らしく尊いものに決まっている。」
それを聞いた沖田が土方を見ると、顔を真っ赤にして怒りを堪えている様に手を握りしめていた。