第83章 時間遡行軍、現る
それを見た永倉は手をわきわきとさせながら、ずずいと身を乗り出す。
「だからよ〜!ほら!その腕がありゃ、坊ちゃん藩士どもなんて目じゃねぇんだよ!あいつらの鼻をへし折ってやりてぇと一度は思うもんだろ!?」
「まったく興味がありません。」
永倉の必死の訴えも、面倒事を嫌うレンには暖簾に腕押しである。
そもそも、だ。
生きてきた時代も世界すらも違うレンには、永倉の価値観は、存在は認められても共感は出来ようにもないこと。
そばで聞いていた刀剣達には、レンの気持ちが理解出来るが、永倉達には説明のしようがない。
「お前、ほんとに男か!?あ、女だった。いや、そうじゃねえ!」
「何が言いたいんですか?」
レンが面倒そうに間髪入れずに突っ込むと、永倉はもどかしそうに頭を掻きむしった。
「だあぁぁー!俺も何が言いてえのか分からなくなってきた!つまりはだな、その…。そうだ!細けぇ事はこの際どうでもいい。」
そこで一度話を切ると、永倉はがしりとレンの肩を掴む。
「お前、新撰組に入れ!」
「私の話聞いてました?」
堂々巡りである。
「んじゃ手合わせしようぜ!」
「するだけなら応じます。」
「ああぁぁー!!めんどくせぇ!お前ら、んなこたあ後で話せ!!」
黙って聞いていた土方の堪忍袋の緒が遂に切れてしまう。
「取り敢えず、お前らは屯所に来る気があるんだろ?」
「無理やりと言えますが。」
「うるせぇ!いちいち揚げ足とってんじゃねぇ!来る気があんならとっとと行くぞ!!」
ったく!と言いながら踵を返した土方の靡く髪を、レンはがしっと鷲掴んだ。
「おあっ…!?」
「まだ話は終わってません。」
突然動きを止められた土方は堪らない。
首が、ぐぎっと音が鳴りそうなほど曲がったのを見た沖田は思わず吹き出し、斎藤はレンの目にも止まらぬ早業にある意味関心を見せた。