第83章 時間遡行軍、現る
「ほんと、お前ら似た者同士だな。」
疲れた様な声に、レンがそちらを振り向くと、藤堂が頭の後ろで手を組みながら面倒そうにしていた。
「案外、気が合ったりして。」
「「は?」」
二人を揶揄うつもりで言った藤堂だったが、凍りつく様な形相で二人に返されてしまい、彼は思わず後退る。
「バカだな。ピリピリしてる時に言やぁ、そうなるに決まってんだろ。」
わしわしと頭を撫でる原田に、藤堂は不服そうに頬を膨らませて彼を見上げた。
「で?何でお前さん達は新撰組には入りたくないんだ?」
永倉は心底不思議そうに、レンをしげしげと見る。
体もがっしりとしているせいか、腰に手を当てて見下ろされると妙に圧がかかる。
燭台切と並んでも背丈はいい勝負ではないだろうか。
だが、それと反して瞳は純粋な疑問が浮かんでいるだけだ。
その視線にレンは少し後退る。
真っ直ぐさが刀剣達を連想してしまい、無碍に出来そうにない。
「…大した理由はありません。」
「んじゃ言ってみろよ。大した事ないんだろ?」
レンがまた後退ると、永倉は更にずんと一歩を詰める。
助けを求める様に燭台切を見ると、彼はやれやれと困った様に笑ってレンの後ろについた。
「僕達は”名前”を残したくないんだ。だから新撰組だけじゃなく、どこの傘下にも入りたくない。これが理由だよ。」
この答えに、永倉はあんぐりと口を開けた。
「お前らほんとに武士かあ!?」
名も無き武士ならば、手柄を立ててなんぼである、というのが浪士の志と思っていた永倉である。
名に箔を付けてこそ、武士の鑑と言えるのだ。
「ったくよ〜!そんなへっぴり腰でどうすんだ!?」
突然の説教に、レンは思わず目を瞬かせる。
「剣の腕で名を上げてこそ武士だろうが!お前らも浪士なんだろ!?いい腕を持ってんだから名を轟かせたいとは思わねえのか!?」
「…はあ…?」
レンは呆れ顔で脱力した。
彼女には、1ミリたりとも興味の湧かない話だからである。