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君に届くまで

第83章 時間遡行軍、現る



「…この街を出れば済む事、ですよね。」

レンが逃亡を匂わせても、沖田の顔色は変わらない。

「…俺達が、みすみす逃すと思うか?」

沖田ではない声が聞こえてレンが振り向くと、そこには土方と斎藤の姿があった。
レンは、一瞬動揺しながらもよくよく周囲の気配を手繰ると、かなりの人数に周囲を囲まれていると気づく。

―時間遡行軍に気を取られすぎた…。

おそらくは戦闘中に囲まれたのだ。

「因みに、俺達も居るからな!」

「よっ!」

「悪りぃな。」

他の場所からは藤堂、永倉、原田が構えていた。
隊の者も多数引き連れていて、彼等はしっかりと隊服を身に纏っている。
つまり、全力でレン達とぶつかり合う、といった意思表示と取れる。

「…私達に随分と揃えましたね。」

レンが皮肉気に笑うと、沖田は嘲笑う。

「目的の為なら手段は選ばない。僕の流派の教えでね。」

そう言って彼が何かの手の合図をすると、沖田の後ろにも隊の者達が付いた。
レンはそれを見て眉を顰める。

「ちょっと多いかなって思ったけど、そんな事なかったね。きっといい勝負になるよ。」

いい笑顔を浮かべる沖田に、レンは分かりやすく舌打ちをした。

「いい性格してますね。」

「お褒めの言葉ありがとう。」

「全く褒めていませんが。」

「へぇ、つれないね。可愛げがないって言われない?」

「大きなお世話です。あなたにそれが関係ありますか?」

「口が悪いんだね、君。」

「あなたも大概だと思いますよ。」

ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うの応酬で、周囲が口を挟む暇もない。
ある意味二人は気が合いそうだという思いすらも浮かぶほど。

「お前ら、いい加減にしておけ。」

「レンちゃん、ちょっと落ち着こう。」

土方は呆れながら、燭台切は苦笑しながらもそれぞれを止めに入る。

「で、どうするの?僕達と殺り合う?それとも僕の案をのむ?」

「無茶はしない方がお互いのためだろう。」

沖田の言葉を土方が後押しする。
その間にも、原田達はじりじりと包囲網を固め始めた。
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