第83章 時間遡行軍、現る
「…何故に誘導尋問に自ら喰らいつく?」
レンはぼそっと呟き、嘘つく事を覚えさせた方がいいのだろうか、と本気で検討したくなった。
それはそれで後々面倒になる事はなるが…。
それを見て、沖田はにやりと笑う。
「やっぱり君達、アレを知ってるんでしょう?」
「「「はっ……!?」」」
乱、大和守、堀川は、しまった!と言わんばかりに焦り始める。
「今更ですか。」
レンはすっかり遠い目をして、沖田に詰め寄った三人を見遣った。
もう、どこから突っ込んでいいのか分からない。
沖田は、レンに目を向けて不敵に笑う。
「ねぇ、黙っててあげてもいいよ?だってさっきの…人に知られたくないんだよね?」
「見返りはなんですか?」
こういう提案を示される場合、大概が親切心ではない。
何らかの要求をされるものである。
「別に大した事じゃないよ。君達には屯所に来てもらおうと思ってるだけ。」
―ふむ。本当に大した事じゃないな。
けれど、とレンは振り返る。
刀剣達は一様にふるふると首を横に振った。
「嫌だ、と言ったら?」
レンが沖田を横目で見ながら反応を伺うと、彼は意地悪そうに笑う。
「そりゃ、会津公にご報告申し上げるだけだよね。吉と出るか凶と出るかは僕の知った事じゃないし。」
沖田はそう言って肩をすくめる。
その言葉に物々しいものを感じ取ったのは、おそらくはレンだけだろう。
時間遡行軍は、たとえ一体だけでもただの人間には脅威となる。
それを倒せる者達が、素性もわからず何処に属すのかも不明となれば、時間遡行軍と同じくらい脅威と取られるかもしれない。