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君に届くまで

第19章 左文字の記憶



「…大将、そりゃ無理ってもんだぜ。」

薬研は見ていられなくなり口を挟む。

「何故ですか?」

「何故って…、恨んでいるからこその怒りだろ。」

「そんなに切り分けるのって難しいものですか?」

「レンちゃんは出来るだろうけど、出来ない人が大半だと思うよ。」

燭台切も口を挟む。
黙って聞いていると平行線になりそうだ。

「…うーん、恨みは恨み、怒りは怒り、だと思うのですが…。」

レンは腕を組み、考え込む。

「レンちゃん、場違いなのはわかってるけど、ちょっといいかな。」

燭台切がレンに近づきつつ切り出す。
レンは不思議そうに燭台切を見上げた。

するとゴンっという音と共に燭台切の拳骨が落ちる。

「ほんっっとに君は何考えてるんだ!!」

燭台切は我慢の限界だった。
見ている間、生きた心地がしなかった。

レンは堪らず拳骨が落ちた頭を押さえ込む。

「態々、禍ツ神になるよう嗾けてどうするんだ!
万が一君が殺されたらどうするつもりだったんだ!!」

「いや、殺されない自信が…」
「言い訳は聞かないよ!君には危機感が無さすぎる!!」

レンは苦い顔をする。

「そんなこと言ったって…。」

「大将。ここは黙って叱られた方がいいと思うぜ。」

いつの間にか薬研が隣に立っていて、レンの肩に手を乗せる。

「薬研まで…。横暴だ、ちくしょう…。」

「何か言ったかい?」

燭台切はレンに凄む。

「いいえ!何も!」

レンはやけくそに言い放つと、そのまま不貞腐れてしまう。

「あ、主様、元気出してください。」

五虎退はレンの側に来ると、彼女を励ました。
彼に励まされるのは、何というか毒気を抜かれる、とレンは思う。

小夜はそのやり取りを唖然として見ていた。
あまりにも自分の知っている人間とはかけ離れている。

小夜の視線に気づいたレンは、彼に向き直る。

「無理でも何でも怒りは収めてください。でないと収拾がつきません。」

小夜は無言でレンをじっと見る。

「あなたは本当に審神者なの?」

小夜は静かに問いかけるが、レンは答えに詰まる。
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