第83章 時間遡行軍、現る
「な、何か変ですよ。」
「わ、分かってる。」
堀川と大和守は言いながらも、刀の軸がずれて下方に下がっている。
二人だけではなく、他の皆も動揺から構えた切っ先が定まらない。
「それより、刀をしっかり構えてください。臨戦体制を取って。」
レンが彼等に声をかけると、はっとした様に柄を握る手に力が入る。
時間遡行軍達は、まだ構えたまま動かない。
レンが試しにダンっ!と強く踏み込むと、時間遡行軍達に殺気が籠り、じりっと全員が半歩踏み込んだ。
「何が目的だろう…?」
乱が呟くと、レンはふぅぅっと大きく息をついた。
何が目的だろうが関係ない。
これまで、彼女は目の前に立ち塞がるものは問答無用で切り捨てて来た。
今も同じだ。
目の前の敵が襲ってこないとは限らない。
敵意を向けられたならやる事は一つ。
「六方になる様に陣形を整えて。」
彼女の声に、皆で背を向け合って六角形になる様に円陣を組む。
「一人二体撃破の目標でいきますよ。」
殺られる前に殺るのだ。
「あちらから来ないなら、こちらから出るまでです。先手必勝って言うでしょう?」
にこりともせず、淡々と大真面目に鼓舞する様は、シュールを通り越してなんだか可笑しかった。
「なんかちょっと斬新。」
「士気が落ちないのが不思議だよね。」
「心がこもってるからじゃない?」
乱、加州、燭台切が笑う。
「まぁ、僕達の見せ場でもあるよね。」
「主であるレンさんの手は煩わせません!」
大和守、堀川が不敵に笑う。
「いきますよ!」
「「「「「応!!」」」」」
レンの掛け声を皮切りに彼等も走り出す。
時間遡行軍達も呼応するかの様に動き出した。
夕闇の大通りで戦闘が始まる。