• テキストサイズ

君に届くまで

第83章 時間遡行軍、現る



そして、次の十字路に差し掛かった途端、何かが凄い勢いで飛び掛かって来た。

「「「!!?」」」

それを視界の端で捉えたレンが、咄嗟に乱の腕を掴んで後ろに避けた。
だが、相手が速かったのか、気付くのが遅れたせいか、頬にかすり傷を負ってしまう。

「レンちゃん、大丈夫!?」

燭台切が二人を受け止めたお陰で、倒れ込む事はなかった。

「時間遡行軍!?」

「何で短刀が!?」

大和守と加州がレンを庇う様に前に出る。

レンには、時間遡行軍が発する邪気を感じ取ることが出来る。
だが、この時間遡行軍からはその類が全く感じられなかった。

―どういうことだ…?

レンが考えていると、ぽつり、ぽつりと、邪気の塊が辺りを囲む様に湧き上がる。

―これはおそらく…、

「時間遡行軍です。周りを囲まれています。」

「囲まれてる!?」

乱が叫ぶ様に聞き返すと、道の影からのそりと大太刀が一体。その後ろから脇差が一体。
反対側の道からも太刀が一体。
路地裏からはぞろぞろと計八体もの打刀と脇差が出てきた。

彼等は慌てて刀を抜く。

「何で…。」

「これじゃあ、まるで…。」

―狙いを定められてるみたいな…。

燭台切の背に冷たいものが伝う。

常とは違う、時間遡行軍の動きに皆が戸惑いを隠せない。
通常、時間遡行軍は歴史上の人物を狙う。
それも、獣が餌に食いつく様に襲い掛かるのだ。
名もない人間など襲った所を見たことがない。

それがどうだろう。
元は刀とは言え、人間と遜色ない彼等に襲い掛かろうと、じわりじわりと包囲網を固めて狭めて来ている。
彼等に歴史的功績がある訳もないというのに…。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp