第83章 時間遡行軍、現る
歩いた。
ひたすらに皆で黙々と歩いた。
空は夕焼けから黄昏に変わる頃で、冷たい風が彼等を震え上がらせる。
…が、震えている理由は、皆同じとは限らない。
「さ、さむい…。」
人が疎な大路地で、レンが腕をさすりながら歩いていると、前を歩いていた加州と大和守がぐるりと振り返った。
その顔は喜色に溢れており、目もきらきらと輝いていた。
「見た!?」
「沖田君だったよ!?」
「本物!!」
「生きてる!!」
加州と大和守は、レンに詰め寄り、交互に話し出す。
「は、はぁ…。」
一方のレンは、あまりの勢いに、引き気味に少し仰け反った。
「強い沖田君!」
「今一番ノってる時!」
「脂が乗ってる時期ですか。魚みたいですね。」
まるで鮮度の様な言い回しだな、と思いながらボソリと呟くと、二人は、くわっと鬼の様な顔で更に詰め寄った。
「「ちっがーう!!!」」
「相変わらず息ぴったりですね。」
レンが面倒そうに答えるのにも構わず、二人は満面の笑顔でずいっと顔を近づける。
「どうだった?ねぇ、どうだった?」
「沖田君カッコよかったでしょ?」
レンはその様子に一歩下がる。
「は、はあ…、まあ…。」
「「でしょー!!?」」
雰囲気に押されただけである。
帰りたい、と思いつつレンがげんなりとしていると、
「ほらほら、まだここ道の真ん中だよ?」
燭台切から助けが入った。