第82章 新撰組
それを見た土方は、疲れた様に長いため息をつき、その空気を霧散させる。
「…あのな、総司。それは俺達の方に”義”がある場合にのみ成立する強硬手段だ。それもなく力に訴えりゃあ俺達は唯の野蛮人に成り下がる。」
土方の言葉に沖田は小さく肩をすくめる。
「冗談ですよ。言ってみただけですよ。」
隣で聞いていた斎藤は僅かに顔を顰める。
「冗談に聞こえる冗談を言え。」
「お前の場合、本気でやりそうだからな。」
原田も少し困ったように、だが、面白そうに笑いながら揶揄するも、沖田はどこ吹く風で肩をすくめただけだった。
山南は、彼等を見回すと納得した風を見せ、レン達に向き直る。
「ご足労ありがとうございます。もうお帰りいただいて結構ですよ。」
にっこりと笑った彼の顔は何処となく胡散臭さがあるが、レンはあえてそこには触れずに軽く会釈する。
「では、私達はこれで失礼します。」
彼女がすっと立ち上がるのを見て、刀剣達もそれに倣う。
「「「「「お邪魔しました。」」」」」
背中に感じる視線には振り向かない気にしない、と言い聞かせて彼等は玄関へと向かって行った。