第82章 新撰組
「ほう…。その調べる事とは?」
山南の眼鏡が光る。
新撰組の彼等を多少なりとも知らなければ、この眼光は尻込みするだろう。まるで獲物を狙う猛禽の様だ。
堀川は少しひやりとしながらも苦笑する。
「これ以上は何とも。僕達の秘密に関わる事でもあるので、聞かないでおいてもらえますか?」
嘘は言っていない。
寧ろ、聞きようによっては誠意があるとも言える。
だがそれは、その秘密を知っている者から見ればの話だ。
山南は僅かに目を眇めて、見定めるように堀川を見た後、そうですか、と小さく言って視線を切った。
「では、あなた方は今後その男達を追うのですか?」
「手がかりの一端なので、取り敢えず調べてみようと思っています。」
堀川が答えると、山南は暫しじっと彼を見た後、少し笑う。
「分かりました。どうやらあなた方は我々の件とは無関係の様ですね。」
その言葉に、刀剣達はそっと息を吐く。
とりあえず、嫌疑は晴れたらしい。
「引き止めてしまい、申し訳ありませんでした。話はこれまでとします。」
山南が言うと、沖田は隣の土方を見遣る。
「やけに大人しいじゃないですか、土方さん?」
その問いに、土方ははっきりと渋面を作る。
「いいも何も…。山南さんがそう言うならこいつらを帰す他ねぇだろ。」
どうやら、納得しきれている訳ではない様だ。
「だったら、いつもみたいにやっちゃえば?なんたって鬼の副長なんだし。」
聞き様によっては、タダでは帰さない、とも聞こえるその言葉に、その場に緊張が走る。
特にレンは、ひたと土方を見定め、そっとクナイに手を伸ばす。