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君に届くまで

第82章 新撰組



「レンさん達は、宿の周りをぐるりと囲う様に歩き、そろそろ戻ろうかと思った矢先に武士を見かけたそうです。一人は編笠を被った男で、もう一人が変わった羽織を目深に被った男だった様です。」

「どうして武士だと分かったんですか?」

山南がレンに問う。

「腰に刀を差していましたから。家と家の隙間から一瞬目に映っただけでしたので詳しくは分かりません。気になって引き返したら既に姿はありませんでした。」

「因みに、僕は一緒にいたけど見てないよ。」

大和守はそう付け加える。

「レンさん達は、後を追う為に路地裏に入りましたが、その男達を見つけられませんでした。
そこへ、新撰組が御用改として来たそうです。
こっそり抜け出そうとしましたが、藤堂さんに見つかった、と言う訳です。」

「成程な。それで俺の話に繋がるのか。」

藤堂は、ふむふむと納得する。

「だけどさ、それなら逃げなくてもよかったんじゃねぇの?初めから話に応じれば俺だってこんなに疑いを持たなかったと思うぜ?」

それを聞いて、レンは嫌そうな顔をした。

「…そんな空気じゃなかったと思いますけど?連行する気満々じゃありませんでした?」

面倒事はごめんだ、とレンは心の中で付け足した。

それにレンにも少しは良心がある。
出発前に長谷部から、なるべく関わらない様にと口酸っぱく忠告を受けているのだから。
ならば、あの時点で取る選択肢は、逃げるの一択だ。

「連行するなんて言ってないだろ?ちょっと話を聞くだけだったって。」

レンの言葉に藤堂は少しムッとする。
それを見た堀川がすかさず割って入る。

「すみません、藤堂さん。でも僕達、これでも身を隠さなければいけないので、よく分からないまま拘束されるのは避けたかったんです。」

目の前のあなた方からは特に、と刀剣達は心の中で付け足す。

「あなた達は追われてるのですか?」

山南が問う。

「追われてるのではなく、ここで調べなきゃいけない事がある、と言った方が正しいです。」

堀川が答えた。
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