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君に届くまで

第82章 新撰組



それを見た燭台切は、少し困った様に笑ってから新撰組の面々へと向き直る。

「お取り込み中すみませんが、僕達はレンちゃんの仲間です。」

そう言うと、我に帰った土方が目を鋭くさせた。

「…そっちから出向くたぁ、いい度胸じゃねぇか。」

威圧の様な敵意を向けられる燭台切だが、顔色を変える事なく土方を見返した。

「まずは話をしましょう。僕達はあなた方とは争いたくはない。だから、刀を納めてもらえませんか?」

至極冷静な燭台切の言葉に、土方は少し目を眇めて真意を押し測る。
だが、当然と言えば当然、裏が読めない。
含むところが見受けられない以上、無闇に刃を向け続けるのは”新撰組として”は心象がよろしくはない。
土方はため息をついた後、斎藤に目配せをする。
すると、斎藤は頷き返して刀を鞘に収めた。

それを見て、燭台切は苦笑しながらレンを見上げる。

「レンちゃん、とりあえず降りといで。」

見ていたレンは、一つ頷いて身を起こした。

だが、彼女のすぐ後ろで殺気の籠った気配がある事に気づく。

「……。」

レンは、そのまま動きを止めて相手の出方を伺った。

すると、それを好機と見たのか、空気が動いた。
そのタイミングで、レンはさっと横に外れると、黒い塊は目標を見失ったらしく、大きく体が傾いた。
手にクナイを握っているところを見ると、同業者か。

レンは呆れながらも、わたわたと手をばたつかせて、身を強張らせたまま落ちていくその人の足を掴んで落下を防ぐ。
言うまでもなく、その人物は逆さ吊りとなってしまった。

「す、すみません、副長…。」

しおしおと言うその言葉を聞いた沖田が、その人を指さしながら益々腹を抱えた。

「あはははは!!もう僕腹痛い!!」

「うるせぇぞ!総司!」

「あははは!!鬼の副長が形なし!」

悔しそうに吠える土方の怒鳴り声にも沖田の笑いは収まる事はなかった。

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