第82章 新撰組
「ふぅ……。」
レンは、屋根の上で大きく息をついて持っていた刀を鞘に収めた。
これ以上長居は無用だ。
有益な情報を聞き出せなかったのが残念だが仕方ない。
「帰るか…。」
レンが一歩踏み出したところで、
「レンちゃん!」
聞き覚えのある声が彼女を呼び止めた。
ーまさか…。
レンが這う様にして屋根から逆さに顔を出すと、唖然として見上げる藤堂ら新撰組の面々と目が合った。
その中でも沖田だけがしゃがんで腹を押さえている。
肩が揺れている事から笑っているのだろう、とレンは推測する。
それから、新撰組の後ろ側に目をやると、見覚えのある影が五つ。
レンは、ひゅっと息を呑む。
何故かそこには燭台切をはじめ、加州達が全員顔を揃えていたのだ。
「…何でそこにいるんですか?」
「「「それはこっちのセリフだから!!」」」
レンの問いに、加州、大和守、乱が怒りの形相で言葉を返した。
とりあえず、彼等が危険に陥っている風ではない事が、レンを少なからず安堵させる。
「あれ程釘を刺されてたのに!」
「術を使っちゃダメだって言ったじゃん!」
大和守と乱が言うと、レンは不思議そうに彼等を見返す。
「はて?”何も”していませんが?」
「「「嘘つけ!」」」
三人が返すもレンは首を傾げるばかり。
「今、木を”走った”でしょ!?」
乱が突っ込むと、レンは少し納得する。
「少し登っただけですよ?」
「どこがだよ!」
加州は突っ込む。
「普通ですよ。誰でも出来ます。」
「普通の人が出来るわけないでしょ!?」
どこかズレたレンの答えに、乱が即答で返す。
見かねた燭台切が、ぽんぽんと三人の肩を宥める。
「とりあえず、ちょっと落ち着こう。ね?」
彼の言葉に、彼等は渋々引き下がる。