第82章 新撰組
井上に連れられるまま歩いていると、俄に騒がしい声や音が聞こえてきた。
やめろ、といった制止する声が多く、刀の打ち合いの様な音も聞こえる。
刀剣達は一様に顔を見合わせた。
「まさか…。」
堀川が少し青褪めながら呟くと、彼等はぶるぶるぶる!と一斉にかぶりを振る。
「まだ分かんない、まだ分かんない。」
「気のせい、気のせい。」
大和守と加州は懸命に誤魔化し、
「あれだけ長谷部から釘を刺されてたんだもん。」
「さすがにこんな所で荒事は…ね。はは…。」
乱と燭台切は乾いた笑いを浮かべた。
「だけど…、まだ聞こえてますよね?」
キン、キン、と刀が撃ち合う音は止む気配がない。
「「「「「…………。」」」」」
彼等の間に沈黙が数秒流れた後、弾かれる様に走り出した。
「おっとっと。」
案内をしていた井上を通り越して、
「お、おい…!お前ら誰だ!?」
廊下で出会した隊士達の呼び止める声にも見向きもせず、音のする方へと急いだ。
曲がり角を抜けて渡り廊下の様な所へ出ると、彼等は一様に息を呑む。
無理もない。
レンは誰かと斬り合いになっていたのだから。
だが、この程度ならば、少し腕が立つ程度というだけで、まだ”奇抜な事”ではない。
「「胃が痛い…。」」
燭台切、堀川は思わず胃の腑を抑えた。