第82章 新撰組
井上に続いて、加州達は屋内へと入っていく。
不審を隠しもしない隊士達の視線を、気まずく思いながらもいなしていく。
「こんな中でレン大丈夫かな。」
「さすがに酷い扱いは受けてないとは思いたいけど。」
加州と大和守は燭台切の後ろでひそひそと話す。
「ボクはもう、暴れてなければ何でもいいよ。」
「ああ見えて、レンさん気が短いところがありますからね。」
加州達の後ろから乱、堀川も話に加わる。
「それそれ。レンってさ、喧嘩を売られるとすぐ買っちゃうんだよ。この間も定例会で絡んできた男達と口喧嘩になっちゃって。大変だったよ。」
加州は大きなため息をつく。
「それ、ボクと買い物行った時もそうだったよ。ナンパされて、思いっきり袖にしたら相手に逆ギレされてさ。レンも逃げればいいのにパンチしてきた奴を投げ飛ばしちゃったの。」
乱もため息をつく。
「何だか僕、嫌な予感がしてきました。」
堀川は言いながら顔を酸っぱくする。
それを見て、隣の乱が小さくため息をついた。
「腕っ節はいい方なんだよ?ボクだって。」
「だけど、それより更に上をいっちゃうからねぇ、レンの場合。」
「そして、割と何でも抱え込む性格。頼るって選択がそもそもないんだよね。」
乱、大和守、加州の愚痴は止まらない。
「頼ってほしいものだよね、こっちとしては。」
「守る甲斐性くらいはあるのにさ。」
「寂しいものだよ?守らせてもらえないって。」
そう言って、しゅんと落ち込んでしまう三人を堀川が、まぁまぁ、と宥める。
それを背中で聞きながら、燭台切もこっそりため息をつく。
本当は僕だってカッコよくレンちゃんを守りたいのに、と燭台切は少し寂しそうに微苦笑を浮かべた。
燭台切もまた、守れない寂しさを少なからず抱えている。
主を慕う想いは皆同じだ。
「…大事になさっているのですな。」
前を行く井上の言葉に、燭台切は少し虚をつかれた後、彼を見る。
そこには、優しそうに笑う井上がいた。
燭台切も、ふっと優しく笑う。
「…はい。レンちゃん自慢の”家族”ですから。」
「そうですか。」
井上は、そう言ってまた前を向いた。