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君に届くまで

第82章 新撰組




「ごめんください!」

まず、一番”年長に見える”燭台切が呼びかけた。
すると、はい、と声がして中から男が現れる。

「どちらさんで?」

新撰組の隊士なのだろう。
腰に刀を携えている。

「仲間がこちらにお邪魔してると聞きまして、迎えに来ました。」

燭台切がにっこり笑うと、男はすっと顔を引き締めた。

「はて、何のことかな。ご覧の通り大所帯なもので…。詳しい経緯をお聞かせ頂こう。」

警戒されたらしい、と悟った加州と大和守は少し困惑気味に顔を見合わせた。

すると乱が燭台切の横に並ぶ。

「藤堂さんって人がボク達の仲間をここへ連れてきた筈だよ。調べてもらえないかな。」

なるべく穏やかに言うが、男の警戒は解けぬまま。
それどころか、通りかかった別の隊士に耳打ちし、その隊士までもが警戒を顕にする。

「藤堂さんが連れてきたんなら、例の下手人だろう。その仲間と言われて、はいそうですか、とは頷けないな。」

そう言って、通りすがった男は刀に手を置いた。

「困ったな、争いたくはないんだけど…。」

燭台切は、眉を顰めながらも応対する様に刀に手を置いた。

これは困った事になった、と皆で思う。
そうこうしている内に四人、五人、と人が集まり出して囲まれていく。

「これは、いよいよまずいね。」

加州は燭台切と背中合わせになる形で構えを取る。

「出来ればこういうのは避けたかったんだけど。」

大和守は乱、堀川を庇う形で構えた。

すると、

「これ、やめなさい。」

初老に近い男性が隊士達を止めた。

「今、その人達の仲間は近藤さん達が詮議しているだろう。場合によっては不問となる事もある。勝手に決めてはならないよ。」

にっこりと穏やかに笑う男は、刀に手をかけた手前の男を諌めた。

「井上さん、しかし…」
「私達は壬生浪だ。だからこそ、礼を欠いてはいけない。」

井上と呼ばれた男に宥められると、隊士達も渋々ながらも構えを解いた。

どうやら問答無用で捕まる心配はなさそうだ。
加州達はそう判断して、刀から手を離し構えを解く。

「私が案内しよう。」

井上が加州達に言った。

「お願いします。」

燭台切はにっこりと笑って答えた。

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