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君に届くまで

第82章 新撰組




ーあの構えは…。

レンは見覚えのある型に眉を顰める。
斎藤の取った構えは、鶴丸が好んで使う居合斬り。
それも静止した状態で取るからには、相手を確実に捕捉できる自信があるという事。
レンは試しに、じりっと少し足をずらしてみると、斎藤はぎゅっと足に力を込めた。
彼女が一歩でも動こうものなら踏み込んでくるに違いない。
確実に、次の一手が最後になるだろう。

ーさて、どうしようか。

レンは視界を広く取りながら空間の把握をする。
左側は廊下で、その向こうは閉じられた部屋。
その廊下は、前方はT字路になっており、向かって右側は渡り廊下の様になっている。
後方は同じ様に廊下と部屋が並んでいる筈だ。
だが、後方の曲がり角のすぐ近くには一本木があった筈。
高さは屋根より高くなっていた。

ー逃げるなら屋内より屋外に限る。

そう思った時、斎藤が動いた。


ひゅんっ!!


鶴丸よりも数段早い太刀筋がレンを捉えにかかる。

レンもクナイで受ける体勢を取りながらも一歩後ろへと飛んだ。
だが、斎藤は読んでいたかの様に、更に一歩を踏み込む。


ガキンっ!!


避けきれないと悟ったレンは横に飛びながら刀を受ける。
足が着くと同時に地を蹴った。

「……!」

レンは斎藤の威力を利用して廊下に飛び乗ったのだ。


「「はあぁぁあ!!?」」


横から驚きの声が上がるが、レンは気にせず木のある方向へと走り出す。

「…っ!待て!!」

完全にレンに裏をかかれた斎藤は一拍遅れて走り出す。
だが、彼女の方が足が速かった。
レンは木の側まで来ると、その木目掛けて飛び移り、そのまま数歩”木の上を走って”屋根に飛び移ってしまった。

まるで猫の様だ、と斎藤は唖然として、屋根を見上げて立ち尽くした。

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