第82章 新撰組
ひゅんっ!!
鶴丸に匹敵するかの様な刀を振り払う音がレンの頭上で響く。
畳に臥していなかったら首が飛んでいたかもしれない。
「お、おい!!」
「止めろって!!」
誰かの制止を聞くことなく、二人はそのまま斬り合いへと発展する。
だが、レンは刀を上手く扱えない。
練習はしていたが、実戦で使えるには程遠い。
よって、受けるのが精一杯の有様だ。
「防戦一方では勝機はないぞ。」
刀を下げる暇もない、的確な攻撃の連続にレンは眉を顰める。
だが、剣士には総じて弱点がある。
彼等は前方の攻撃には強いが、ランダムな攻撃はあまり得意ではないという事。
普段、刀剣達の稽古をつけている時に気づいたレンなりの解釈だ。
レンは、自身の刀で攻撃を流すと同時に斎藤の左手を掴む。
次いで素早く足を振り上げて胴を蹴った。
「ぐっ……!」
斎藤は堪らず二、三歩よろけてしまい、攻撃の手は止まる。
レンの予想通りとなった。
つまり、彼等には外からの攻撃を素早く打ち込めばいい。
彼女の稽古に慣れていない者ならば十中八九入る。