第82章 新撰組
レンが暫く金平糖を楽しんでいると、騒がしい足音が遠くの方から響いてくる。
もしや、と思っていると、予想通りの人物が現れた。
「おい!まだいるか!?」
本当に、何でこんな騒がしい奴に捕まったんだろう、とレンは心底疑問に思う。
彼女の呆れを他所に、藤堂は手の甲で額を拭う。
「よしよし。ちゃんと居たな。」
「まぁ…。そういう約束でしたし。」
レンが不本意そうに最後の一粒を口に放ると、藤堂は苦笑する。
「牢に入れてても安心できないっつーか…。お前簡単に逃げ出しそうだからさ。ついな。」
冗談を言いながら、藤堂が牢の鍵を開けると、レンはすくっと立ち上がり座敷牢から出る。
「そうですね。造りは簡単なんで逃げられなくはないですね。」
彼女は出た後、牢の鉄格子を鷲掴み、がしゃがしゃと少し揺らす。
地面に深々と刺さってはいるが、鉄の線は細く、遊びがあるところを見ると、そう頑丈ではないのだろう。
蹴破るのはそう難しくはないだろうな、と推測する。
だが、それを聞いた藤堂は戦慄する。
「…え?」
簡易とは言え、腐っても鉄格子。
いくら刀を所持していても、鉄を斬るのは至難の業。
余程の怪力でなければ、突破はまず無理だろう。
レンには嘘を言っている気配がないのが、余計に信憑性があって怖い。
「冗談だろ?」
藤堂が恐々問いかけると、レンは藤堂をじっと見た後、無機質な笑顔を浮かべる。
「さぁ?どっちだと思います?」
「…どっちか分からねぇよ…。」
もしかしたら、大変なものを捕まえてしまったかもしれない、と藤堂は少し後悔した。