第82章 新撰組
「…もしかして甘いもの持ってます?」
「ぎくぎくっ…。な、何のことかなぁー…。」
突いてみると、明らかに嘘をついている様子。
レンはにっこり笑って手を差し出した。
「それくれるなら、黙って入ってあげます。」
それを聞いて、藤堂は半泣きになる。
懐に入っているのは、沖田に頼まれた金平糖だ。
賭けで負けた支払い分なのである。
「おまっ…!汚ねぇぞ!?」
「じゃ、このまま振り切って帰りますけど、いいですか?」
レンは容赦なく、それを請求する。
これは藤堂が折れるしかなかった。
「これ手に入れるのに苦労したんだからな〜…。」
藤堂は泣く泣く懐から金平糖を出して、レンの手の平に乗せる。
「ありがとうございます。約束通りここで待っていますよ。」
レンは、受け取った紙包から漂う甘い匂いに、嬉しそうに鼻を近づけて、素直に座敷牢に入る。
「約束だからな。大人しくしてろよ?」
藤堂は悔し気にレンが摘んだ金平糖を見遣ると、駆け出して行った。