第82章 新撰組
そして、八木邸では…。
「よし。俺は土方さん呼んでくるから、お前はこの中に入ってろ。」
そう言って指さす先には座敷牢がある。
レンは眉を顰めながら、そっぽを向いた。
「お断りします。」
罪人として来たわけじゃない、とレンは思う。
こんな粗雑な扱いをされて、はいそうですか、などと受け入れられるわけがなかった。
「え!?ちょっ…、頼むよ〜。今人がいなくて見張れる奴がいないんだよ。なっ?」
藤堂が少し下手に出て頼んでみるも、レンはジト目で見るばかり。
「一緒に連れ歩けばいいじゃないですか。」
そうすれば偵察も出来て、レンには一石二鳥だ。
「んなわけにいくか!敵かもしれねぇ奴に間取りを教える様なもんだろが!バカにしてんのか!?」
そうと分かっていて、何で人を用意していなかったんだろう、とレンは呆れる。
「…さては、私を捕まえたのは行き当たりばったりだったんですか?」
「ぎくっ…!」
レンが呆れを含んだ目で藤堂を見ると、彼は気まず気に視線を逸らす。
当たりか、と彼女は静かに呆れ返った。
「はぁ〜…。」
仕方ない、とレンは思い直す。
気分の悪くなる座敷牢に入るからには、何か交換条件を提示したい。
そう考えたところで、ふと、藤堂から甘い匂いがすることに気がついた。