第82章 新撰組
一方、宿では…。
やっとのことで、全員を集め終わった乱は、焦りから捲し立てる様に事情を説明する。
「それどういう事!?」
全てを聞いた加州が腰を浮かせた。
「ボクにも止めようがなかったんだ。レンに逃げる気がないんだもん、どうにも出来ないよ!」
「も〜!あんのバカ娘!!」
加州は苦悶の表情で頭を掻きむしる。
「藤堂さんのしつこさが一枚上手だったと思うしかないよ。遅かれ早かれここも突き止められてたかも。昨日みたいに八番隊全員で大挙してこられたらヤバかったかもよ?」
大和守は内心の焦りを抑えつつ、清光を宥める。
「問題はどうやってレンちゃんを助け出すか、だね。」
燭台切は難しい顔で考え込む。
「用が済んだら戻るからって言ってた。…けど、新撰組ってそんな簡単に逃げられるものなの?」
乱は不安気に燭台切と堀川を見る。
「難しいと思います。この時代では随一と謳われるほどには剣の腕は確かです。って事はフットワークが軽い筈です。簡単には逃してもらえないんじゃないかと思いますね。」
理路整然と立てられた堀川の推理に、一同は大きなため息をついて肩を落とした。
「僕、胃が痛くなってきたよ…。」
燭台切はちくちくと痛み出した鳩尾を摩る。
「どうしてこう…。」
「トラブルばっかり呼び込むのかな…。」
加州と大和守は揃って額を抑える。
「ボクもうくったくた…。」
乱は疲れ切ってゴロンと畳の上に寝転がった。