第81章 幕末へ
「レン、どうし…。……!」
乱は歩みが止まったレンに気がつき、後ろを振り向く彼女の元へ戻ると、知らない青年に手を掴まれているのに気がついた。
「レン…!」
乱が焦りの声を上げると、レンと藤堂は揃って乱を見た。
「お前、こいつの連れか?んじゃ、ちょっとこいつしょっ引くから。」
「え!?いやいやいや、どこに連れてく気!?」
乱は驚いてレンの繋がれていない方の腕を引っ張った。
だが、藤堂も負けじと掴んだ手首を引っ張る。
「どこってな…。俺は新撰組だ。で、こいつは要注意人物なんだから、屯所に連れてくに決まってんだろ!」
「そんなこと言われたって、はいそうですかって渡せるわけないでしょ…!とにかく、無理なものは無理だから!」
そこで更に乱がレンの腕を引く。
さながら彼女を綱に見立てた綱引きの様だ。
「…痛いんですが。」
レンは渋い顔をしながら右に左に揺らされる。
「放せよ、小僧!絶対連れてくからな!」
「だから行かせないって言ってるでしょ!」
「知るか!こいつはあの男に繋がってるかもしれないんだ!折角掴んだ手がかりをみすみす放るわけないだろ!?」
「え?」
「は?」
藤堂が言った言葉に、レンと乱はぴたりと止まる。
「どりゃあ!」
「あ…!」
乱に至っては掴んだ手も離してしまい、綱引きに負けてしまう。
「よっしゃ!取った…」
「あの男って誰のことですか?もしかして変わった羽織を着ている男ですか?」
レンはずいっと身を乗り出して藤堂に詰め寄った。
「あ、あぁ…。ってか、やっぱり何か知ってやがるな!?」
レンはそれを聞いて、考え始めた。