第81章 幕末へ
新撰組が追っているのは、レン達も探していたフードコートの男。
それも自分達よりは情報を持っていると見える。
地道に探し回るよりも状況の流れに乗って屯所に行く方が効率がいいかもしれない、とレンは考える。
行けば尋問が必ずあるだろう。
つまり、質問という名の情報が手に入るという事だ。
それに目的は加州達の消滅の阻止。
ならば、少なからず新撰組の中の現状を知らなければどうする事も出来ないだろう。
一度は、彼等のアジトに忍び込もうと考えていたのだ。だったら、それが今でも早くはない。
「…い…。おい!聞いてるのか?」
「え、何がです?」
「お前、暢気だな。これからしょっ引かれるってのに。」
「だから、やめてってば!」
「駄目だ!こいつはあの男に繋がってる。ぜってぇ逃がさねぇ!」
「じゃあ、早く行きましょう。」
レンは乱と藤堂の言い合いに割って入る。
「は?」
「レン!?」
「屯所に連れて行くのでしょう?あ、ご飯は出してくださいね。」
「「はぁああぁぁ!?」」
乱と藤堂は色々な意味で素っ頓狂な声を上げた。
「ちょっ…!レン!?本気!?」
「はい、本気です。」
「ふ、ふふ…。ははははっ!よーし、覚悟しろよ?質問に全部答えるまで逃さねぇからな!」
藤堂は意気揚々とレンの手を掴み直す。
「おい、ちび!」
「ちびじゃない!」
藤堂は得意げにレンを後ろ手に隠して乱を見る。
「こいつを返して欲しかったら全員屯所まで来い!手がかりは一つも逃さ…」
「大丈夫です。用が済んだらすぐ帰りますから。それより引き続き捜索お願いします。」
レンはそんな藤堂の言葉を遮り、ひょっこりと彼の後ろから顔を出した。
乱と藤堂はなんとも言えない顔でレンを見る。
「…まぁ、そんなわけで。こいつ連れてくから。」
藤堂はそう言ってレンを引っ張る様に歩き出す。
「あと、お願いしますね。」
レンは、引かれるまま歩きつつ後ろを振り返って乱に言った。
「あ…!ちょっと、レン!」
乱は唖然としたままそれを見送る事しか出来なかった。