第81章 幕末へ
「ありがとうございました。」
レンがお店に声をかけると、
「毎度。また来てや。」
そう返事が返ってくる。
もはや、ただの店巡りになりつつあるな、とレンは内心ため息をつく。
「ここもハズレだったね。」
「そうですね。少し飽きてくるくらいには手がかりのての字も掴めませんね。」
レンがげんなりしながら言うと、乱は微苦笑で返した。
「まぁ、砂漠で指輪を探そうってくらいには、手がかり自体が掴みどころないしね。」
「それはまぁ…。私も承知しています。」
レンは渋々返す。
そんな彼女をやれやれと見てから、乱は周りに目を向けた。
今は正午辺りなのだろう。
俄に食べ物処が賑わい始めている。
「一度戻ろっか。みんなも戻ってるよ、きっと。」
「そうですね。お昼を食べてからまた動いた方が効率はいいでしょう。」
相変わらず食べ物が優先だな、と乱は笑う。
「よし!じゃ、お昼を食べにレッツゴー。」
「了解です。」
二人が歩き出した時、後ろからレンの手を引く者があった。
彼女は足を踏み出せずに一歩後ろへと戻される。
ー何だ…?
レンは不審に思いつつ、素早く振り向くと、
「よっ!昨日はやってくれたな。」
軽快な挨拶をする藤堂平助がいた。
「え…、いつの間に…。」
レンは捕まった事よりも、気配らしい気配がなかった事に慄いた。