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君に届くまで

第81章 幕末へ



「とりあえず、とっかかりが何もないので、当面はフードを被った侍を探しましょう。」

「「聞いてよ!」」

「何か異存ありますか?」

「「ないです…。」」

あまりに暖簾に腕押しなレンに、加州と乱はがっくりと首を垂れる。
他の者達は、そんなレン達の様子を見て困った様に笑った。

「レンちゃんじゃないけど。まぁ、当面はその男を追うしかなさそうだね。」

「これといった手がかりもないですしね。」

燭台切と堀川は互いに顔を見合わせて言う。

「その男も見たのはレンだけだけどね。」

大和守は、隣のレンを見ながら言う。

「本当に見ましたよ?」

疑われている、と思ったのか、レンは少し顔を顰めた。
それを見て、大和守は宥める様に彼女の頭を軽く撫でる。

「分かってるって。だから前途多難だな、と思って。」

「そうですね、私もちらっと見ただけですし…。目撃ポイントを中心にしらみ潰しに探していくより他は無いと思います。」

レンは大和守の言葉を受けて、腕を組んだ。
見かけただけの人物を探すのは骨が折れる作業だ。
ただでさえ限られた時間である。
悠長にはやっていられない。

「この地区を拠点として片っ端から聞き込みをしていくのが一番の近道でしょうね。」

レンの言葉を受けて、燭台切が腕を組む。

「そうだね。けど、どうしたって一日や二日で出来る事じゃないからアジトの様な拠点を確保した方がいいかもしれないよね。」

彼の言葉に、堀川は顎に指を添えて思い出すそぶりを見せる。

「それでしたら、聞き込みがてら長屋を借りられないか調べてみるのも手かもしれないですよ。」

「長屋ねぇ…、いいかもしれない。宿の方が待遇はいいんだけどお金かかるもんね。」

乱がそれに同意を示す。

「じゃ、明日から動きますか。」

「そうだね。外はまだ雪降ってるし。」

加州と大和守が言うと、皆は頷いた。

「話も纏まった事ですし、ご飯にしましょう。お腹空きました。」

レンがお腹をさすりながら言うと、彼等は少し笑う。

「今日はごたごたしてたしね。」

「ちょっと早いけど、ご飯食べてゆっくり休みますか。」

大和守と燭台切が言うと、皆は頷き、一人二人と立ち上がって一階へ降りていった。

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