第81章 幕末へ
「レンと安定、帰って来ないね…。」
「どこまで行ったのかな。」
乱と加州は通りを行き交う人々を眺めながら、レンと大和守の姿を探す。
宿を出てからおよそ一刻。
未だ帰らない事に不安を感じ始めていた。
「ただいま〜…。」
加州達の後ろからくたびれた声と共に襖が開き、大和守とレンが現れた。
乱はすっと立ち上がると、二人に駆け寄る。
「も〜、遅いよ二人とも。どこまで行ってたの?」
彼は、腰に手を当てて二人を詰った。
心配に心配が重なり、もう少しで探しに行こうかと迷い始めていたところだった。
「ほんとだよ、も〜。待ちくたびれちゃった。あと少ししたら探しに行こうかと思ってたとこだよ。」
加州も深く息をつきながら胸を撫で下ろした。
二人の様子を見て大和守は気まずげに後ろ頭を掻いて困った様に笑う。
「ごめんごめん。ちょっとごたついてたからさ。」
そう言ってレンを見るも、彼女は顔色一つ変えてはいなかった。
ーもしかして…。
大和守は、内心嫌な予感を抱えた。
レンは視線を寄越した大和守をちらりと見ると、また正面に向き直る。
「すみません。新撰組に追いかけられていたもので。」
悪びれもなく、さらっと爆弾発言をかましたレンに、大和守はぴしりと固まった。
ーす、ストレート過ぎる…。
此度の出陣には、色々と制限がある。
彼女はそれに重きを置いていない様子。
だが、更に凍りついたのは聞いていた乱と加州だ。
「え…、どういう事…?」
「捕まりそうになった…?」
大和守は内心苦々しく思いながらも口を開いた。
「あー…、いや、実はね…」
苦笑いで話し出した内容に、二人は更に愕然とする。