第81章 幕末へ
「探せ!」
怒鳴りながらバタバタと数人が廊下を駆け抜けて行く。
レンと大和守は空き部屋の押し入れに身を潜めていた。勿論、外から見えない様に結界を張っている。
「ここは見たか?」
「いや、まだ見ていない。」
そんな会話が聞こえてきて、バタン!と襖が開かれる音が響く。
肩を跳ねさせた大和守をレンが目で制すと、大和守は分かってると言うように一つ頷きを返す。
「いないな。」
「押し入れを開けてみよう。」
その声の後に、バタン!と一気に襖が開かれ、視界が明るくなると共に、新撰組が二人立っていた。
「いないな。ここじゃないのか。」
「やっぱり裏口から出て行ったって言ってたのがそうだったんじゃないか?」
「そうかもな。俺達も藤堂さんを追うぞ。」
「あぁ。」
パタン…。
閉じられた襖に、二人は知らず知らず詰めていた息を吐き出した。
「良かったぁ…。本当に外から見えないんだね。」
「隠せるのは姿だけですからね。声を出したら即バレます。」
「十分だよ。ほんと命拾いしたよ〜…。」
大和守は安堵から横に積まれた布団にもたれ掛かった。
「あとはここから出るだけですが…。」
レンは襖を少し開けて外の様子を伺う。
まだ騒がしい様で、慌ただしい足音や大声が聞こえている。
「当分は無理そうですね。」
レンは呟いて、そっと襖を閉めた。