第81章 幕末へ
大和守は、不貞腐れた様に顔を逸らしたレンを見つつ、レンのこれまでに思いを馳せる。
彼女はずっと追われて命を狙われる生活をしてきていた。
「…安心したかった?」
そう問うと、レンはちらりと大和守を見てからこくりと小さく頷いた。
心なしか、彼女の頬が赤い様な気がする。
「恥ずかしかったの?」
大和守は、可愛く思いながらくすりと笑う。
すると、それを見たレンの顔が、ぶすっと膨れ面になる。
「…だから言いたくなかったんです。カッコ悪いから。」
「でも、僕は素直に言ってくれた方が嬉しいかな。」
大和守は、少し笑いながらレンの頭を撫でる。
主の事は何でも知りたいものなのだ。
たとえ、カッコ悪いと思う事でも。
「だって、レンのしたい事は僕もしたいもの。」
大和守の言葉を聞いたレンから険が消えた。
ー私のしたい事が安定のしたい事…。
心の中で繰り返された言葉が徐々に染み渡り、レンは少しの嬉しさを覚える。
不安にも似たもやもやとしたものは、安堵へと塗り替えられていく。
独りじゃない事が心強かった。
「…なら、もう少しだけ付き合ってください。」
頼る言葉が素直に零れ出た。
昔のレンだったら、出てくる事はなかった言葉だ。
大和守は、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「うん、いいよ。レンの気が済むまで付き合うよ。」
大和守の二つ返事にレンも穏やかな笑みを浮かべた。