第81章 幕末へ
二人はぶらぶらと宿の周りを当て所なく歩く。
路地裏を見てみたり、家々の隙間を覗いてみたり。
気が向けば出店も覗いてみたり…。
「ねぇ、レン。今度あっちに行ってみようよ。」
大和守が更に通りの向こうを指さすが、レンは次の十字路を西側へ曲がる道を指さす。
「裏側が行ってみたいです。」
「…何もないと思うよ。」
大和守は不可思議そうに首を傾げる。
「何もないところを確認したいです。」
だが、レンはやっぱり譲らない。
大和守はそんな彼女を見つつ、腕を組む。
ー警戒してる?
でも何を?
「何が見たいの?」
「…何も。」
「うそだぁ。何かを警戒してる様に見えるよ?」
大和守は戯けた様に言うと、レンは少し顔を顰めてじとっと大和守を見上げた。
大和守は笑ってはいるが、レンが言うまで聞き出そうとするだろう。
彼からは譲らないぞ、という意志が見え隠れしていた。
「…怪しい奴がいないか、自分を狙う奴がいないか…。それが無い事を確認したかったんです。」
出来れば言いたくなかった、とレンは内心ごちる。
ここは時代も世界も違うのだ。自身を狙う奴などいない。
レンもそれはよく分かっている。
分かっているが、それを自分の目で見て確かめたかった。
「レンを狙う奴なんていないと思うよ?」
大和守の言葉に、やっぱりな、とレンは益々顔を顰める。
「分かってますよ、それは。」