第81章 幕末へ
堀川は一人ぽかんと佇む。
主の過去を殆ど知らない彼は、レンの手慣れた様子に驚くばかり。
「何でそんなに詳しいんですか?」
「昔、故郷で一人旅をする生活をしていたので。詳しい、と言うより、経験によるもの、と言った方が正しいですかね。」
レンの答えに堀川は益々首を傾げる。
一人旅とは言っても交通機関が整い、店の金銭的基準も殆ど決められている現代で、どう格差が生まれるものなのか。彼には理解に苦しむものだ。
それを見た他の面々は苦笑する。
「そういえば、まだレンちゃんの事知らなかったよね。」
燭台切はそう切り出して、レンの事を話し出す。
日本とは違う世界で生きてきた事。
レンをはじめ、その世界に忍が主戦力として占めている事。
レンの兄弟や生い立ち…。
「なんか、色々と納得できました。」
堀川の中で、今までの疑問符の点が線で繋がっていく。
「レンさんがお強いのがとても疑問だったんです。他の本丸の事も知らないし。特別に選ばれた人なんだろうと思っていました。」
「選ばれたとは言い難いかも。」
「選ばれた、というより、奪い取った、の方がしっくりくるかな。」
大和守と加州は困った様に笑った。
「…また、何をしたんです?」
不穏な響きに、堀川は少し顔を引き攣らせた。
「それがね…」
刀剣達との出会い、政府への殴り込み、などなど…。燭台切が話だそうとしたところで、一人外を眺めていたレンがすっと立つ。
「ちょっと外を見て回ってきます。」
「雪だよ?」
何考えてるの、と言わんばかりに怪訝な顔をした加州が突っ込んだ。
「ちょっとだけですよ。」
レンがその顔を少し不満げに見返すと、大和守がすっと立ち上がる。
「僕も行く。」
加州が大和守をじっと見ると、彼は小さく頷いて返す。
「ん〜…。じゃいっか。安定お願い。」
「任せて。」
僅かに微笑み合う二人の様子を見て、レンは出入り口の襖へ歩き出し、大和守がそれに続いた。