第81章 幕末へ
「ほうか。江戸のもんはけったいな奴が多いんけど、あんさんらは気前ええな。」
「ありがとうございます。早速部屋で休みたいのですが。」
「ほな、案内しよか。」
レンが促すと、男はすっと立ち上がって階段へと歩き出した。
だが、レン達はまだ草履を履いたままで敷居に上がってすらいない。
レンは刀剣達を振り返るが、彼等は一様に首を横に振る。
それを見た彼女は、男の背中に声をかけた。
「…あの草履はどこに置いたら?」
すると男は、少し驚いた様な、それでいて阿保の子を見る様な顔つきで振り返った。
「なんや、宿は初めてかいな。しゃあないな。ほれ、そこの端にある下駄箱に詰めて置くんや。自分らのだって分かる様にしとくんやで。」
男が指さす先を一行が視線で辿ると、斜め後ろにその棚があり、既に何足か草履が置かれていた。
成程。草履に根付や小物やらが括り付けられている。
彼等は早速草履を脱ぐと、先人に倣って詰めて置いていく。
「置けたかいな。ほな、行くで。」
今度こそ、レン達は敷居に上がって男について行った。