第81章 幕末へ
「さっき見えた感じだと、ここって京の西側だよね。」
大和守が今しがた降りた山を見上げながら言った。
「ってことは、ここ嵐山だったりして。」
「西側ってあんまり来た事ないかも。」
「清光はそうかもね。」
腕を組んで思い出す加州に大和守は少し笑う。
「確か、外れの方に宿がニ、三軒あったような…。」
堀川も記憶を辿りながら、見える景色をざっと見渡す。
「行ってみよう。」
燭台切の声に皆が頷き、道を進んでいった。
鳥居の立つ道の入り口から京へ足を踏み入れた一行は、端から三つ目の道に出た所で足を止めた。
「随分賑わってるね。」
大和守はきょろきょろと辺りを見回す。
見えるだけでも、小間物屋、甘味処、反物屋、屋台式の八百屋らしきものもある。
「ここ朱雀大路じゃないよね。」
京と言えば朱雀大路と言われる程のメインストリートである。
それを彷彿とさせる様な賑わいだった。
「こんなに栄えてたっけ?」
加州も首を傾げながら辺りを見回した。
「とりあえず、こっちの方に行ってみるかい?」
燭台切は左側を指差す。
理由は無く、何となくで選んだ。
「行く所もないし。とりあえず、こっち行こうよ。ボク早くあったかいとこ行きたい。」
乱は白い息を悴んだ手に吹きかけながら言う。
「そうね。俺も早くあったまりたい。」
加州も鼻を啜りながら言い、一行は北側へとまた歩き出した。